THE DANIEL Diet



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伝統的な食生活は最良の健康法


タロイモが主食だったころのほうが、ハワイ人はずっと健康だった

著 ローラ シャピロ


ホノルルの北西50キロの町ワイアナエに住む実業家パット・オプヌイ(48)が、医者からあと5年の命だと宣告されたのは、4年前のこと。当時オプヌイは、肥満と高血圧と心臓肥大で、「歩くのもやっと」の状態だった。昨年には、趣味で集めていたクラシックカーも売り払った。「身辺整理のつもり」だったという。

だが彼は、死にそなえる一方で生への努力も怠らなかった。ワイアナエ・コースト総合医療センターのテリー・シンタニ博士が行う「ワイアナエ・ダイエット・プログラム」に参加したのだ。

彼はそこで3週間、ハワイの伝統的な食事にどっぷり漬かった。「体重が13キロも落ち、みるみる力がわいてきた」と彼は言う。「週に1度は医者通いをしていたのが、今は3ヶ月に1度。心臓と血圧の薬も1日8錠から2錠に減った。こんなに元気になるなら、車を売るんじゃなかった」

ハワイ州は平均寿命がアメリカで最も良い。なのに、ハワイ人(ハワイの先住民)の健康状態はワーストワン。ハワイ人の65%以上が肥満に苦しんでおり、癌、心臓病、糖尿病で死ぬ人の割合は、いずれも全米で1番高い。

まるで「ハワイアン・パラドックス」だと、シンタニは言う。彼は食生活が原因とみる。「ハワイ人の主食は昔はタロイモだった。それが今は豚肉の缶詰だ」
タロイモ、海草、サツマイモ、青菜、果物、そして少量の魚を中心にメニューを組むシンタニのプログラムは、驚くべき効果を表している。糖尿病に苦しんでいたメアリー・ベア(38)がいい例だ。

ベアは以前、朝と晩に40単位のインスリンを注射していた。それが、「プログラムを始めて5日目で、血糖値が正常に戻った」。以来2年近く、彼女はインスリンを注射していない。

ヨーロッパでは、パンと根菜・野菜類からなる伝統的食生活がファストフードにとって代るまでには、長い移行期間が存在した。ところがハワイのように、19世紀になるまで比較的隔絶されていた所では、わずかの間で食生活が一変する形となった。

「昔は、ハワイで太った人といえば王族ぐらいだった」と、シンタニは言う。「ところが今や、私のプログラムの参加者には体重150キロクラスがザラにいる。250キロの人もまれではない」

遺伝学的に体が順応?

伝統的な食生活が優れているは、低脂肪の点ばかりではないとする研究もある。
アリゾナ州にある研究機関「ネイティブ・シーズ / サーチ」は、砂漠地帯の伝統的な食用植物の保存に力を入れている。地元の先住民族ピマ・インディアンが、かつてはこの地で豊富に採れた食用植物に、遺伝的に適応していたとみられるからだ。

ピマ・インディアンの間でも、今では高脂肪・高カロリーのジャンクフードが一般化している。そのため肥満がはびこり、35歳以上の住民の半数は糖尿病患者だ(比較としては世界最高)。

ピマ・インディアンを対象に、伝統食によるダイエット・プログラムを実施しているネイティブ・シーズ / サーチの栄養学者メアリー・ホスキンは、こう語る。「サボテンなどの砂漠の食用植物は溶解性の食物繊維に富んでおり、この繊維には血糖値の急激な上昇を防ぐ働きがある。こうした食べ物が、昔から住民の体を病気から守ってきたのだ」

このような新ダイエット・プログラムは、専門家の注目を集めている。全米最大の個人向け健康保険会社ミューチュアル・オブ・オマハはこのほど、ディーン・オーニッシュ博士率いる予防医学研究所(カリフォルニア州)での治療費を、心臓病患者に限り全額負担すると発表した。

オーニッシュは77年以来、重度の心臓病患者を対象に、低脂肪の食事と運動、瞑想、グループ討論を組み合わせた治療プログラムを実施している。バイパス手術や血管形成術を上回る効果があることが実証されており、費用もずっと安い。クリントン政権の新健康保険制度では、保健医療として認められる見通しだ。

昔ながらの食生活を守れるのなら、それに越したことはない。だが現代人には、入手可能な材料の範囲内で低脂肪・高繊維の食事をとることが重要だと、シンタニとホスキンは言う。

実際、今のハワイではタロイモを食べるといってもむずかしい。シンタニはプログラムの参加者に、玄米や全粒パンなどで代用するよう勧めている。

それでもシンタニは、ハワイの伝統的料理に重点を置く。「1日1500カロリーに抑えろなんて言ってもダメ。大切なのは、人々の心の奥底に健全な食生活を根つかせることだ。その点、伝統料理なら心にしっくり来る」

ニュースウィーク 1993.9.15



現代病に立ち向かう古代法
ブリタニカ百科事典、医療と健康1995年度版 再印刷許可取得


驚くべき結果

このプログラムの臨床結果には驚かされた。最初のグループのコレステロール値は、14.1%も下がり、そして、心臓病の原因の一つにも考えられている物質、トリグリセリドもまた、22.3%減少した。またその中の糖尿病患者の平均血糖値も、最初の161.9mg/dl から123.4へと減少し、高血圧患者においては、最高血圧値が約11%、最小血圧値は、約10%降がった。参加者達の減量も、驚くべき成果を成し遂げた。このことは、このプログラムにのっとれば、普段より多く食べた者の方が、3週間後のプログラム終了時には、減量達成という矛盾を証明した。第1グループの平均減量は、21日間で8kg (17.1lb )を記録した。

おそらく、1番目覚しい成果は、従来の手に負えないような様々な健康問題をもこのプログラムがコントロールできるということであろう。数人の糖尿病患者は、インシュリンや抗糖尿剤などの薬を必要としなくなった。ある患者は、1日に100ユニットという単位のインシュリンを毎日摂取していたが、2週間後には、不要となり、また他の、インシュリン関係の薬を摂っていた患者は、その種類や量を減らしたり、必要性も無くなったりした。この食餌を継続しなかった者は、インシュリン生活へ引き返された。またその他には、以前に喘息の発作で、1年に4、5回は、救急医療の手当てを受けていた患者においては、激しい発作も無くなり、喘息の薬の使用量も減った。その他の例として、このプログラムの最初の頃、関節炎により、家から出られなかった人が、3週間のプログラム終了時には、何と、ダンスのグループに混じって、フラを踊っていたことである。

制限なき適応

1994年代初期、160人が正式に3週間に及ぶワイアナエ・ダイエットを終了した。これは、減量だけを目的とした食餌療法では無かったのにも関わらず、他の、減量にだけ焦点を当て、それを目的としたものと比べてみても、素晴しい成果を収めた。ワイアナエ・ダイエット参加者の、20%以上の人が、フォローアップとして、平均24ヶ月間以上その意味ある減量を保っている。このことは、ほとんどの商業減量プログラムの長期的成功者が1割にも満たないものより、優れていると言えよう。

この臨床上の関係を抜きにしても、ワイアナエ・ダイエット・プログラムは、健康的生活スタイルを提唱し、伝統的文化の保存を奨励している。また伝統的農業方を支援することによって、環境保護にも役立っているのである。それは同時に、文化には、人々を健康的習慣へと導く価値があるという証明でもある。繰り返し熱心に説くカロリー計算法や脂肪分のカットにばかり、駆り立てられるダイエット・プログラムより好ましく受け入れやすい。それは、WCCHC の従事する者達が、その計画を文化的な関係に織り交ぜ、強調し、結びつけようと努力した結果である。例えるならば、伝統的な食生活に回帰するということは、祖先への敬意を表すことにもなる、というように。またこのプログラムには、様々な民族の伝統的食物が用いられているので、このプログラムが世界各地においても、容易に適応されるということにも繋がるのである。ハワイにおいては、バラエティーに富んだ民族グループ等によって、このダイエットが、ハワイ原住民族だけに適応しているのではないことの証明に成功している。

経済的見地からこのプログラムを考えても、相対的にコストが低いことが分かる。調査結果からも、栄養を中心としたこのような食餌法は、ほとんどの場合、$25,000〜$100,000もかかる心臓バイパス手術をするより、心臓病治療において、効果的であると言える。アメリカにおけるバイパス手術は、年間400,000件も行われており、その費用は、$90,000,000,000($900億)近くに登り、そのうちのほとんどが、平均4年以内の再手術が必要なのである。これは、ワイアナエ・ダイエット・プログラムのような食餌療法が、まず一番に介入すべき低コストの心臓病治療方であることを明確にしている。

ハワイはまさに、人々が、その文化や伝統を置き去りにした時、健康面に何が起こるかを示した、典型的見本である。これは、全世界において、起こり得る問題を窺い知れる縮図にもなっている。この食餌療法が、今現在、世界中の裕福なる国家において、まさに流行性とも言える肥満や慢性病に対する1つの解決法となる可能性を持っているのである。

医学博士テリー・T ・シンタニ
医師としてホノルルに在住。この食餌療法によって、ハワイ原住民族であるハワイアンの抱えている慢性病に打ち勝つため、貢献している。発案者。